山と海。私は、どちらが好きかと聞かれると、少し迷って、「海」と答える。 私が、生まれ、育った八代は、球磨川が流れ、海に面していた町であったが、私が住んでいたところから海までは、車で10分はかかった。今ならすぐ車で走れるが、子どもでは、バスや自転車で行くしかない。だから海へは行かず、私は自転車で球磨川へ行った。 高校時代は、土曜日になると球磨川の川岸の公園へ出かけたものだった。特になんということもなく、風にゆれる水面や、川面に映る陽の輝きを見ていた。それだけでよかった。 鹿児島に来てからは、大学の講義の合間に(決してサボってではない)与次郎ヶ浜へ、海を見に行った。自転車で行けるところに海があるのがうれしくてならなかった。向かいに桜島を眺め、錦江湾を見る。私は、まわりを見回し、誰も見ていないのを確かめると、防波堤を乗り越え、テトラポットの上に立った。もちろん、それだけでは終わらない。恐る恐るテトラポットをつたいながら波打ち際まで行き、そっと手を伸ばし海水に触れる。そこまでしないと、私にとって「海を見に行った」ことにはならない。季節によって冷たく感じることもあれば、ぬるく感じることもあった。時折、イルカの群れが飛び跳ねているのも見た。 先日、宣伝カーで、与次郎ヶ浜へ行った。臨海公園で休憩した折に、私は久しぶりにテトラポットの上に立った。もちろん、海水にも触れた。懐かしかった。テトラポットから見る桜島は、25年前とかわらない。錦江湾もかわらない。 改めて強く思った。この錦江湾に人工島はいらない! (2003.3.5) |