母の味

今回も、暮れにおせち料理を作った。結婚したばかりのころは、料理の本を見ながら、実家の母に電話で尋ねながら作ったものだった。
 初めのころは、何日も前から計画を立て、買い物に行き、大晦日の日は、昼からおせちに取り掛かった。雑煮、お吸い物、がめ煮、田作り、栗きんとん、きんかん漬け、紅白酢の物、昆布巻き、ゴボウ巻き、数の子、黒豆、こんなものだろうか。
 結婚してちょうど20年、2番目の子を12月24日に出産した年を除いて、毎年おせち料理を作ってきた。
 年を追うごとに、要領もよくなる、手抜きも覚えてきた。ここ数年は、夕方から、すき焼きの準備(大晦日の夕食はすき焼きに決めている)をしながら、おせちの準備を始め、紅白歌合戦を見ながら作りすすめ、紅白が終わる頃には、おせち料理も出来上がる。今年は、品数が少し減ってしまった。
 我が家では、料理は、重箱には入れず、一人一枚の盆膳に少しずつ盛り合わせていく。元旦の朝、全員が揃って、新年のあいさつをして食べ始める。
 我が家では、日ごろから、食事の時は、全員揃って「お疲れさまでした。いただきます。」と声をかけてから食べ始める。とはいっても、平日は1日に夕食のときしか揃わない。それも全員集合は週に2〜3日あるだろうか。
 
 子どもが小さい時は、3月3日には雛寿司を作ったり、7月には七夕飾りを作ったり、クリスマスにはツリーを飾り、部屋中にモールを飾っていた。今は、季節の行事といったら、それぞれの誕生日のお祝いのほかは、暮れの餅つきとおせち料理くらいだろうか。
 餅つきは、いまだに我が家は「うす」と「きね」でつく。毎年30日と決めていて、甥っ子や姪っ子たちも駆けつけてにぎやかに餅をつく。この日の朝ご飯は蒸しあがったばかりの「おこわ」と決まっている。お昼ごはんは、炭火で焼いた「いわし」とつきたてのきな粉たっぷりの「からいも餅」。近所にも恒例の「からいも餅」のおすそ分けをして喜んでもらっている。

 子どもたちに伝えていく私なりの「母の味」が、このお正月の「おせち料理」だろう。日ごろは忙しくしているばかりで、あわただしい「母」であるが、大晦日と正月だけは、気分だけでも「お正月」らしさを伝えていきたいと思っている。
 
 私の「お正月」も、自分が子どものころに経験したお正月を擬えているように思う。
 将来、私の子どもたちも自分自身の家庭で「お正月」を作っていくのだろう。それがどんな姿なのか、楽しみなような、恐いような…。親としての自分が試されていいるような気持ちだ。
 いずれにしても、平和で明るい未来を心から願っている。